コラム

子どもの力を引き出す伝え方

昭和~平成と令和の意識の違い

皆さんは、子どもに物事を伝える時に意識していることはありますでしょうか。無意識、無自覚のまま思った事を口にしていませんでしょうか。感受性の強い子どもに対してはどのような伝え方をするかで、プラスになるか、マイナスになるか、その効果は180度変わってしまいます。
特に、令和の時代になり、社会環境、人々の意識や価値観に大きな変化が起こり、それに伴ってコミュニケーションのあり方にも大きな変化が生まれています。したがって、昭和から平成育った大人が令和の子ども、若者と接する際には、自分達が育った時代との違いを意識することが大切です。その最も大きなポイントは「肯定」です。相手を肯定することによって力を引き出し、子どもや若者の自発的行動や成長に繋げるというものです。昭和、平成の時代、大人から子どもへの伝え方というと「何やってるんだ!」「そんなことじゃダメだ!」「もっとこうしろ!」と否定と命令の口調が多かったと言えるのではないでしょうか。そして、威圧と恐怖と忍耐によって強い気持ちが育つんだという精神論が横行していたような気がします。
しかし、時が移り、威圧と恐怖と忍耐からは辛い、苦しいといったマイナスの感情しか生まれず、何も成長に繋がらないということにようやく気づき始め、長きにわたる誤った精神論の時代が終わろうとしています。

若いアスリートの目覚ましい活躍

近年、様々な競技における若いアスリートの世界的な活躍が目立ちます。大谷翔平選手をはじめ、女子ゴルフの黄金世代、プラチナ世代、東京オリンピックでは卓球、柔道、水泳、体操、スケボーをはじめとした偉業によって合計58個という過去最多のメダル数を獲得しました。こうした背景の一つとして、選手の競技への向き合い方と指導法の変化があると言われています。
まず最近の若いアスリートは、その競技が「とにかく好き」「とにかく楽しい」という思いを常に持っています。そこから「世界でトップになる」という目標を自発的に打ち立て、指導者もその思いを大切にして「そのために何をしなければならないのか?」を一緒に考えながら合理的に取り組んでいきます。そこには自分の目標達成のための挑戦と忍耐はありますが、「怒られるからやる」というような古い時代の威圧と恐怖による忍耐は一切ありません。
この傾向は、正月の箱根駅伝で伴走している監督の言葉からも明らかです。例えば、本来の実力を出せていない走者に対して「お前ならもっとやれるはずだ」「今までの練習を思い出して」「そうそう!そうだ!いいぞ!その調子!」と気持ちを鼓舞しながら必ず「肯定」の言葉がかけられます。これにはテレビで観ている側でさえ勇気づけられる気持ちがしますから、走っている選手はやる気が引き出されることは間違いないでしょう。

子どもに肯定的な言葉をかける習慣

このように人は、肯定的な言葉によって気持ちがプラスに働き、力を発揮しやすくなります。しかも、それは全国や世界規模のトップアスリートにかぎった話ではなく、私たち一般の生活にも当てはまります。例えば、飲食店やコンビニに行った時、アルバイト店員が先輩に怒られているのを聴くと嫌な気持ちになり、その場から離れたくなってしまいます。相手を否定する言葉から発せられるマイナスの力はとにかく大きく、そこからプラスの良い影響が生まれることはほとんどありません。
したがって、大人は子どもや若者に対して常に肯定的な言葉をかけ続けることが大切です。そのためには一つひとつの言動について目的と理由を日頃から語り掛ける習慣を作ることが必要になります。「なぜ勉強をした方が良いのか?」「なぜ規則正しい生活をした方が良いのか?」「なぜ礼儀が必要なのか?」などを常日頃から冷静に話しておくようにします。そして、できない事を叱責するのではなく、出来た事への肯定を一つひとつ積み重ねるようにしていきます。仮にできない事があっても「次はできるようにしよう!」と粘り強く声を掛けるようにします。その結果、言う側と言われる側の間にプラスの好循環が生まれて、良い成果が得られるようになってくるはずです。
大人と子どもは合わせ鏡のようなものです。大人が冷静になれば、子どもも冷静に受け止めてくれるようになります。それは辛坊や忍耐ということではなく、大人として合理的な考え方をすることに他ならないのです。ぜひ箱根駅伝の動画でも観て、その重要性を意識してみてください。

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