コラム

あれこれと言い聞かせない子育て

人に言う前に自分はどうなのか?

よく街中で親が子どもに滾々と説教している光景を目にします。
先日も自転車の後部に乗せた小学校低学年ぐらいの男の子に対して、お母さんが「もっとこうしなさい」「なんであれができないの?」と大声で怒りながら走る場面に遭遇しました。
そういう私も小学生の頃は、母親の説教が始まったら30分、1時間と延々と続いていましたから全く他人事ではありません。それ以外にも生活の細かな事での注意は日常茶飯事という状態でした。
そして今、自分が親になって思うのは「子どもに言う前に親自身はどうなのか?」をしっかりと見つめ、責任を持って子どもに物申さなければならないということです。
例えば、「もっと勉強しなさい」と言った場合、「では、あなたは勉強しているのですか?」と聞き返されて「はい!」と自信を持って答えられるか。「もっと規則正しい生活をしなさい」と言うなら「自分は規則正しい生活を送れているのか?」を改めて考えなければいけません。
自分ができもしないことを他人に命じるのは、ただの押し付けであり、強要であり、何の説得力もありませんし、そもそもそれを言う資格が無いと言わざるを得ません。もし子どもがなかなか言うことを聞いてくれないという悩みを抱えている場合、その説得力があるかどうか、つまり言い聞かせている事を親自身が本当にできているかどうかを確認することも大切です。

言い聞かせるよりやって見せる

人を教育しようとする時、言い聞かせることほど効果が無く、非効率的なことはないと私は考えています。ましてや怒ったり、説教したりすることはその最たる行為ではないかと思います。人から「ああしろ!こうしろ!」「これじゃダメだ!あれはダメだ!」と言われると、反発心が働き、その命令を聞きたくなくなるのが人間というものです。
穏やかな口調で優しく言い諭されるならまだしも激しく罵られたりしたら心の扉は固く閉ざしてしまうことになります。したがって、子どもにこうして欲しい、こうなって欲しいと本当に願うのならば、言い聞かせるのを止めて、やって見せる教育法に切り替えてみてはどうでしょうか。だからこそ「子どもに言う前に親自身はどうなのか?」について自信と責任を持たなければならないのです。
そして、子どもに勉強して欲しいと思うなら、まず親が大人になってもしっかり勉強を続けてその姿を見せれば良いのです。子どもに規則正しい生活をして欲しいと思うなら、まず親が誰よりも規則正しい生活をしてその姿を見せるだけで良いのです。他人に対して優しくなって欲しい、物事に積極的に取り組んで欲しいといったことも同じです。そうすれば、子どもは言い聞かせるよりもはるかに大きな影響を受けて、自然と身についていくようになるはずです。

子育ては親育て

このように考えると、子育てとは子どもを育てるものではなく、子どもが育つものと言うことができます。子どもを自分の思い通りに育てようとするからつい言い聞かせようとしてしまいますが、親の理想的な姿を見ることで子どもが良い影響を受けるのならば何も言い聞かせる必要はなく、自律的に自発的に育ってくれるようになります。
そのためには、親が自信と責任を持って見せられる理想的な姿を実践しなければならないのです。つまり、子育てとは親育てとも言えるのです。そして、同じ事は仕事場における先輩と後輩、上司と部下にも当てはまります。もし後輩や部下を早く一人前に育てたいと思うなら、まずは自分自身の姿を客観的に見極めておく必要があるのです。
その結果、先輩、上司として自信と責任を持って理想的な姿であると言えるのならば、言い聞かせるのではなく、その姿を見せておけば十分なのです。

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